回転木熊のグルペット

真紅のWilierにまたがって栃木の田舎道をぷらぷらしています。

村上 春樹「意味がなければスイングはない」

村上春樹が日本有数の分厚さを誇るオーディオ雑誌「季刊ステレオサウンド」(オーディオ界のカーグラフィックみたいな存在)に連載していた音楽評論というか音楽エッセイを加筆してまとめた一冊。
この糞重い広告の塊のような雑誌を、僕は毎回2000円出して買うなんてことはせずに図書館の雑誌コーナーで拾い読みしていたりするのだが、氏の連載は毎回わりと楽しみに読んでいた。

で、今回改めて通読した訳だがやっぱり面白かった。どのくらい面白かったかというと、僕は村上春樹の小説の熱心な読者ではない(「世界の終わりと~」辺りの時期までしかまともに読んでいない)のだが、これなら彼の小説をもうちょっと読んでもいいかな、と思い直す程度に面白かった。

グッド・ミュージックならなんでも聴く、といった姿勢が徹底していて、書名から察せられる通りにジャズから始まってクラシックもロックもJ-POPも語っている。
音楽は何が好きですか?と尋ねると「なんでも聴きます」と応える人は多いけれど、その「なんでも」が「倖田來未とトランス」だったりしてそりゃなんでもじゃねえよという話に往々にしてなったりするのだが、この人はホントに「なんでも」だ。多分僕の音楽好きを5倍悪化させたら彼くらいになるんじゃないだろうか、と思う。

プーランクからスガシカオまでという幅広い題材をどの程度楽しめるかは、読者の経験値に依るとしか言いようがない。楽しめる人はぐんぐん楽しめるし分からない人はとことん分からないかもしれない。そりゃそうだ。音楽エッセイだもの。
それでも、ゼルキンを語るときにルービンシュタインを引き合いに出したり、スプリングスティーンとカーヴァーの類似点を示唆したり、といった間口の広げ方というか取っ付きやすさの匙加減はさすがにプロの物書きらしい巧妙さがあって、安心して読み進めることが出来る。

それにしても、こういう「著名な作家による音楽に関するちょっと長いエッセイ」を掲載出来るのが、音楽雑誌でも文芸誌でも一般誌でもなくオーディオ専門誌しか無かったという事実に、日本の音楽ジャーナリズムの不毛さをありありとリアルに実感させられる。

★★★★☆
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