回転木熊のグルペット

真紅のWilierにまたがって栃木の田舎道をぷらぷらしています。

ポール・オースター「ティンブクトゥ」

Timbuktuと聞くと、高校世界史の「カンカン・ムーサの統治で14世紀に西アフリカで栄えたマリ王国の首都であるトゥンブクトゥ」といった断片的な記憶が頭に浮かぶ。ここでのティンブクトゥとはもっとぼんやりとした遠くにある黄金郷といったイメージか。

自称詩人のご主人様ウィリー・クリスマス(クリスマスと言えば「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」なんてのもあったね)と忠犬ミスター・ボーンズとの寓話を主題として、後半にはオースターらしからぬ「サバービアの憂鬱」テイストがカットイン。相変わらずの裏切り上手。

オースター版の「我輩は犬である」なのは間違いないのだが、漱石のそれや保坂和志の「明け方の猫」のように動物の視点に立つことを殊更に強調する風でもない。いつものように捻くれた人間たち(と犬)が淡々と描かれていく。

いつものように、ではあるのだが、今回のオースターはニヤニヤしながら読めてしまう部分も多くカジュアルな感触もあった。中編であることも一因かも知れない。

なんというか、ディックの居ない平日の昼下がりに、ポリーがテラスのデッキチェアで読んでいそうな一冊。その傍らにはスパーキーことミスター・ボーンズがお気に入りの芝生で戯れていて…

★★★★☆
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