回転木熊のグルペット

真紅のWilierにまたがって栃木の田舎道をぷらぷらしています。

世界で一番好きな喫茶店

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僕が世界で一番好きだった喫茶店が閉店してしまったそうです。

酸味より苦みが勝った冷めても美味いストロングブレンドというコーヒーがあって。正統派のジャズがJBLのOlympusだったかApolloだったかLancerだったかと真空管アンプで静かに鳴らされていて。最新号の雑誌がたっぷりあって。適度に混んで適度にすいていて。ピアノもあって月イチでミニライブもあって。

なによりマスターとの絶妙な距離感が居心地の良さに繋がっていた気がします。たまに音楽話とか世間話を交わす程度。身の上話には関わりすぎず。カウンターも良しテーブルも良し。特にスピーカーの音が一番良く聴けるテーブルはお気に入りでした。そこで本や雑誌を読んだり、モノ書いたり、下らない考え事したり。

夜になると客足も引いて、一息ついたマスターが「これ聴いたことあります?」ってとっておきのアルバムをかけてくれる。ちょっとだけボリュームを上げて。ジャッキー・マクリーンの"4,5 and 6"とかチック・コリア&ゲイリー・バートンの"Crystal Silence"とか、ココで聴いて愛聴盤になったアルバムも数知れません。

そういえば、大西順子の1stアルバムを聴いたのもこの店でした。やたらガッツのあるピアノトリオが流れていて「ピアニストは誰ですか?」と聞いたら、「日本人の女性なんですよ。新人の」と嬉しそうに答えてくれて、二人で感心したものです。そんな大西さんも最近ぱったり音沙汰が無くなってしまいましたが・・・

大学を卒業してその街を離れましたが、なにか用事があって近くに行ったときには必ず立ち寄ったものです。数年ぶりでも顔を覚えていてくれて、ストロングブレンドのブラック仕様が、ちょっと大きめのカップで出てきました。不覚なことに、そんな素敵な店はそうそう無いってことに気付いたのは、離れてしばらくしてからのことでした。

そんな店が、当時の彼女に「またあの店行ってたんでしょ」とヤキモチを焼かせたような店が、永遠に失われてしまいました。

自分が好きになった人やモノや世界は、気付かぬうちにどんどん失われていってしまうものですね。
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