回転木熊のグルペット

真紅のWilierにまたがって栃木の田舎道をぷらぷらしています。

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近藤 史恵「エデン」

「エデン」近藤 史恵 著(新潮社・2010・単行本)

・好評を博した前作「サクリファイス」の主人公、白石誓が引き続き登場する。舞台はツール・ド・フランス。
・前作は多少なりともミステリ要素が感じられたが今作にはほとんどそれが無い。唯一のイベントも自転車乗りなら「またコレか」とウンザリしてしまうほど陳腐なネタ。少しは工夫が欲しい。ツールのアウトラインをざっくりなぞっただけという印象。
・単純なスポーツ小説として読むなら、自転車を知らない人には本場ロードレースのガイド本として機能するかも知れない。また、登場人物の実在モデルを推察して「あの人とこの人が同じレースを走ってるのか…」とニヤニヤする楽しみはある。
・次は山岳向きな白石の脚質を活かしてジロかブエルタで泥臭いストーリーを期待したいところ。

★★★☆☆

その他の自転車関連書籍は→本【自転車関連】
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伊藤 礼「自転車ぎこぎこ」

「自転車ぎこぎこ」伊藤 礼 著(平凡社・2009・単行本)

・「こぐこぐ自転車」が好評を博した伊藤礼センセイの自転車エッセイ第二弾。
・前作から4年が経ってセンセイのサイクルライフはますます充実。DAHONのヘリオスSLという10kg未満の折り畳み自転車にまたがって(或いは肩に提げて)日本全国を走り回っておられる模様。自転車乗りとしてもベテランの風格が出てきて、以前は国土地理院の地形図じゃなくっちゃ、とか言ってたのに今では100円ショップの格安地図一枚でどこへでもホイホイ出向くようになってしまった。
・「こぐこぐ」が出た時に内田百の「阿房列車」に準える論評が散見されたが、前作は都内をウロウロするにも北海道を走るにもいちいち大袈裟に力んでいるのが文章にも表れていて、あまりピンと来るものではなかった。阿房たるにはたとえ本人が力んでいても端から見ると程よく脱力して飄々と見えることが肝要。その点「ぎこぎこ」は旅の語り口も旅そのものも良い意味で力が抜けてきて、いよいよ「阿房自転車」の様相を呈してきたと素直に感心することしきり。ヨコチ君やタムラ君がだんだんヒマラヤ山系君に見えてきてしまったのは僕だけではあるまい。
・とくに「すでに自転車の楽しみを知っている人」には前作よりも今作の方を推賞したいのである。

★★★★☆


※「こぐこぐ自転車」伊藤 礼 著(平凡社・2005・単行本)★★★☆☆

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高千穂 遙「ヒルクライマー」

「ヒルクライマー」高千穂 遙 著(小学館・2009・単行本)

・マラソン競技からドロップアウトした主人公が自転車でのヒルクライムを通じて再生へ踏み出す姿を中心に、その周辺の登坂の魅力に取り憑かれた人びとを描く。いわばヒルクライムにまつわる群像劇。
・職業作家の作品だけあって文章に無駄な力みや変な自己主張が無く、すらすらと読みやすい。キャラクター設定も描き分けも大袈裟なくらいキッチリやってあるので群像劇にありがちな戸惑いもない。高千穂氏自身が自転車乗りなので専門的な描写にも不安感が少ないのも嬉しいところ。
・従来の自転車小説はあまりにストイック過ぎると感じたのか、お色気シーンがちょろっと挟んであるのだが、唐突すぎてせっかくのテンポの良さがそこで途切れてしまう印象。ま、著者一流の「サービス、サービスぅ」なのだろうとは思うけれど。

★★★☆☆

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石田ゆうすけ「行かずに死ねるか!」及び続編2冊

1.「行かずに死ねるか! ―世界9万5000km自転車ひとり旅―」
  石田 ゆうすけ 著(実業之日本社・2003・単行本)
2.「いちばん危険なトイレといちばんの星空 ―世界9万5000km自転車ひとり旅II―」
  石田 ゆうすけ 著(実業之日本社・2005・単行本)
3.「洗面器でヤギごはん ―世界9万5000km自転車ひとり旅III―」
  石田 ゆうすけ 著(実業之日本社・2006・単行本)

・7年半に渡って自転車で世界一周をした著者による旅の記録。1がノーマルな旅行記、2は様々な「独断による世界一」をテーマに、3は「食」という切り口から再び世界一周を見つめ直したもの。
・普通に書いたら1だけで600頁を超えそうな所だが、エピソードを切り詰めたおかげで250頁程度に収まっており、読みやすい文章と相まって通読しやすいのが良い。1を気に入ったら2と3を読んでも損はないと思うが、さすがに3になるとネタの既視感は強くなる。2と3は章立てが細かいので拾い読みでも充分楽しめるが。
・スーパーモデル級の美人だらけというエストニアと、ティカルを始めとしたマヤ文明遺跡の宝庫である中米に行ってみたくなった。

1.★★★★☆
2.★★★☆☆
3.★★★☆☆

その他の自転車関連書籍は→本【自転車関連】

白鳥 和也「丘の上の小さな街で」

「丘の上の小さな街で」白鳥 和也 著(出版・2008・文庫本)

・ランドナー系の蘊蓄本やツーリング本を物している著者による短編小説集。表題作の「丘の上~」はランドナー親父が80年代の北方謙三ぶっていてなかなか可愛らしいのだが、小説としてまとまっているのは1話めの「CRANE」か。
・職業文筆家としてはライティングスキルに少々首を捻らざるを得ない部分があって、「小説」と銘打たれると「小説家の小説」と見比べてしまうだけに余計にアラが目立つ。そこは普通プロの読み手たる編集者がフォローするものなのだが、日頃から乱文誤用誤字脱字だらけの雑誌を刊行しているこの出版社には無理だったのだろう。著者が平凡社から出している本ではここまでの乱れは見られないので。
・全編に渡る衒学趣味を覚悟して読んで頂きたいが、正直な所この人には今までのような蘊蓄モノが似合っているように感じる。

★★☆☆☆

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竹内 真「自転車少年記―あの風の中へ」

「自転車少年記―あの風の中へ」竹内 真 著(新潮社・2006・文庫本)

・以前紹介した単行本の「自転車少年記」を下敷きにした文庫版。単行本の幼少期~高校時代をカットして後半を膨らませ、ケータイ小説臭を薄めて大人が読みやすい小説に仕立て直した雰囲気。少年記というより「自転車青年記」といった印象。ただその分自転車濃度が多少薄まったのも事実。
・物語後半の設定は今の自転車ブームのボリュームゾーンである20代後半~30代の男性にドンピシャという感じで、なかなか上手いところに持ってきたと思う。単行本だと躊躇してしまうところもあったが、この内容で文庫本なら他人に薦めやすくなった。

★★★☆☆

→単行本の「自転車少年記」はこちら
その他の自転車関連書籍は→本【自転車関連】

羽田 圭介「走ル」

「走ル」羽田 圭介 著(河出書房新社・2008・単行本)

・ある日古いビアンキを倉庫から引っ張り出した高校生の僕は、部活の後にそのまま北に向かって走り始め… という前出のロン・マクラーティ「奇跡の自転車」と似たような設定。やや目新しいのは行く先々で出会う人々と関わらずに、ひたすら東京のオトモダチとメールしてるだけってとこ。地元の人との交流という紀行小説の常套手段を封じてみたわけだが、それが見事にスベっているのが残念。
・取材も経験も無く矮小な脳内で小説を書くとこうなる、という悪い見本。著者の想像力が完全に現実を下回っている。日本の純文学界にはたくさん良い作家も居るけれど、それ以上にダメな作家がまだまだいっぱい居ることを思い知らされた一冊。
・なお、自転車乗りの琴線に触れる描写は一行たりとも無い。

★☆☆☆☆

※追記
・しがらみがあるとは言え、こんな物を苟も芥川賞候補作にしてしまった文藝春秋には大いに反省して頂きたい。本人ですら「何でコレが?」と思ったはずだ。

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川西 蘭「セカンドウィンド(1)」

「セカンドウィンド(1)」川西 蘭 著(ジャイブ・2007・文庫本)

・自転車競技に出会った少年が、やがて信頼できる仲間や目標を見いだし始める。ひとことで言えば竹内真の「自転車少年記」とあさのあつこの「バッテリー」を足して2で割ったような小説。続編を予定した展開なので読後のカタルシスは余り無い。後半の激坂における天狗の描写などはマンガチックで笑ってしまうが、ライトノベルとしては妥当な線か。

★★☆☆☆

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斎藤 純「銀輪の覇者」

「銀輪の覇者」斎藤 純 著(早川書房・2004・単行本、2007年に文庫化)

・太平洋戦争開戦前夜の日本で実用車を使った自転車の賞金レースが開かれた。そこに集まったワケあり人間たちの事情がレースと交錯する。その背後には軍部の思惑も入り乱れ… というかなり荒唐無稽なミステリ。
・荒唐無稽なのだが人物設定やプロットが結構巧みで、意外にすんなりと自転車狂想曲の世界観に入り込めてしまった。元が新聞連載なだけあってやや冗長な感は否めないが、読み応えは充分。

★★★★☆

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近藤 史恵「サクリファイス」

「サクリファイス」近藤 史恵 著(新潮社・2007・単行本)

・ロードレースを舞台にした異色のミステリ。ロードレースならではのエースとアシストの関係や競技の特徴を上手にプロットに折り込んでいる。さほど深い謎解きや心理描写はないが、旅行中にさらっと読むのに丁度良いボリュームだった。
・自転車競技をまったく知らない人が読んでも問題ないように丁寧な解説がされており、他人に薦めやすいのがポイント。

★★★★☆

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まとめ

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